2013年04月08日

建築家職能運動120年奮闘記 vol.38

 辰野一行は、1888年(明治21年)の末にロンドンに渡り、岡田と桜井は早速ロンドン大学の講義を聴講することになりました。ロンドン大学はコンドルが卒業し、5年前には辰野も通った日本で建築を学ぶ者にとっては憧れの大学です。
 同時に一行は、今回の旅の主目的である17世紀末に設立された世界最古の中央銀行であるイングランド銀行を見学します。しかし、イングランド銀行は中世のカテドラルを改修したもので、図面は手に入ったものの日銀の設計にはあまり参考にならないことがわかり、辰野はヨーロッパ大陸に渡ることを決意するのです。
 そこで出会ったのが、日銀のお手本にふさわしい10年前に完成したベルギーの国立銀行本店でした。現在も国立銀行の一部に貨幣博物館として残されている、その建築の端正な美しさと重厚な佇まいに感動し、設計者である建築家のアンリ・ベイヤールに会います。そして、この銀行を「城砦」として設計したという話を聞き、当時の覇権を争うヨーロッパ情勢の中での小国ベルギーと、大陸の大国から常に脅かされている日本に相通ずるものを感じ、ベイヤールにアドバイザー就任の要請をします。
 辰野は岡田、桜井と共にベイヤールのアドバイスを受けながら、1889年(明治22年)初めには、日銀の基本計画を完成させました。その貴重な図面をスティール製の大筒に納め大切に抱えて、辰野と岡田がロンドンを発ち帰国したのはその年の秋でした。桜井はロンドン大学に正式入学するため、ひとりロンドンに残ることになりました。

松本 純一郎

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